Vol.24 「カワイイ」という不思議 2004/5/25 by 歩

SUBJECT:

赤ちゃんは「カワイイ」。
もちろん、赤ちゃんが嫌いでカワイイと思わない人もいるのだろうが、それは置いておく。
赤ちゃんは、大人と比べるとわかるように、明らかに「カワイイ」デザインをしている。
今日は、この「カワイイ」について考えてみたい。

赤ちゃんは成長するために生まれてくる。つまり大人なるために生まれてくる。
ならば、大人をそのまま縮小した形で生まれてくれば話は早いと思うのだが、そうではない。
赤ちゃんは、いわゆる赤ちゃん体型というプロポーションで生まれてくる。
赤ちゃん体型のおおきな特徴は、頭部が大きい。これは大脳を優先的に発達させるためという、機能性からそういう構造になっている。
それ以外にも赤ちゃんの構造は、成長するための、機能性からそのような構造になっているという場合が多い。
そのデザインは非常に合理的で、まさに人体の神秘である。
このように合理的かつ機能的にできているにもかかわらず、全体を見ると非常に「カワイイ」のである。
では赤ちゃんはなぜ、「カワイイ」必要があるのだろうか?

私の妻は、赤ちゃんが「カワイイ」のは「赤ちゃんが生きていくための手段」だという。
人間の赤ちゃんは、他人に「育ててもらわなければ」生きていけない。
生まれたての赤ちゃんは、自分で寝返りも打てない。寝返りが打てるようになるのに半年近く掛かる。
その後やっと動けるようになっても、自力で食べ物を得ることはできない。
排泄、体温調節など、生命維持全般を他人に委ねなければならない。
赤ちゃんは、非常に手の掛かる生き物なのである。
こんなに手の掛かるものが、「もしカワイくなかったら、とても育てることができない」のだそうだ。
「カワイくなかったら、とっくに捨てている」という。
たしかに、最終的に大人になるからといって、髭ボウボウの小さいオッサンが生まれてきてしまったら、とても育てる気にならないかもしれない。
だとすると、人は「カワイイ」から、苦労してまで赤ちゃんを育てるということになる。
「カワイイ」という感情は、いったい何なのだろうか?

ディック=ブルーナというデザイナーがいる。絵本「ミッフィー」を作った人である。
「ミッフィー」は非常にシンプルなキャラクターだが、そのデザインは全て計算された上で作られている。
「ミッフィー」の顔は無表情だが、それは表情を排除することにより、見る側の想像力を掻き立たせ、より感情移入させる為なのである。
デザインをシンプルにすることで、より多くの人が共感できるようにし、それでいて淡白に見えないように、少しでこぼこした線で描かれている。
目鼻口の位置も、全てあの位置、あの比率でないといけない、というところまで絞り込まれている(らしい)。
そして、それらは全て、人に「カワイイ」と感じさせるように仕向けられている。
事実、「ミッフィー」は、世界各国で受け入れられている。
ディック=ブルーナもすごいが、世界中の人が「カワイイ」と感じるものに、デザイン的な共通点が存在するということにも、驚かされる。

「カワイイ」という感情は、つまりは人間の本能なのだろうと思う。
「カワイイ」と感じるから、注目して見る。注目するから、興味を抱くようになり、やがて「愛する」ようになる。「愛する」から守る。
「カワイイ」を発端にして、種族を守り、維持していくようにプログラムされているのかもしれない。
種族を維持するために、「カワイイ」という感情を持つように進化していったのだとしたら、生命というのは本当に不思議である。

また人間以外でも、子育てを必要とする動物の赤ちゃんは、たいてい「カワイイ」。
昆虫などの、子育てを必要としない生物は、赤ちゃんもあまりかわいくないのである。
このことから、動物もわが子を「カワイイ」と感じ、育てているのかもしれない。
また、人間が他の動物の赤ちゃんを見て「カワイイ」と感じるのと同様に、動物も人間の赤ちゃんを「カワイイ」と感じているのかもしれない。
そう考えると、ちょっと心が暖まる。