Vol.11 カルマの協奏曲(2/3) 2001/03/04 by Kato

話を戻します。
まあ、そんな事件を起こした湯沢君ですから、その後は大変でしたね。もちろん先生にも殴られてました。
当時は体罰なんて余裕でまかり通ってましたから、酷いもんです。

全く謝らない湯沢君に、今にして思えば先生も恐怖を感じてたんでしょう、
もの凄い勢いで張り手が飛んでました。

そんな状態ですから、その日はまだ午前中だったと思うんですが、授業は全て中止で、
生徒はみんな家に帰らされました。

と言っても一部の男子は家に帰らず「ラッキー」とばかりに、
いつもは上級生に陣取られている学校の目の前の駄菓子屋で、
早速さっきの「事件」をつまみにひょうたんみたいな形のチューブに入ったまずいジュースを飲んでました。

切られた子が「湯沢エンガッチョって言ってた」だ、「湯沢はあの子のことが好きだった」だとか、
色々と憶測が出ました。3時を過ぎると事件を知っている上級生も情報欲しさに話の輪に加わり、
なんとなくそれがきっかけで「先輩」と仲良くなれた気がして、
妙に嬉しかったのを覚えています。

上級生を交えた原因究明ミーティングも結局結論は出ず、6時を過ぎあたりが暗くなるにつれ三々五々皆家に帰っていき、
残されたのは私と澤部君だけとなりました。

湯沢君を待ちたかったんですかねぇ。
私はそんなつもりではなかったんですが、なんとなく校門から湯沢君が出てくるのを待ってました。

今更になりますが、私と湯沢君は物凄く仲が良かったんです。
湯沢君はどこかしらクラスの悪のヒーロー的なところがありましたが、
やはり近寄りがったかったんでしょう。
仲の良かったのは私と澤部君、それと3学年上にいる彼の兄だけでした。

私は逆に彼の持っている妙な暗黒面、ダークフォースに惹かれ、仲の良い友人であり続けました。

澤部君もどちらかと言えば私を通じて喋る程度でしたし、彼も澤部君をあからさまに馬鹿にしてましたから、
実質同学年で仲の良かったのは私だけだったのでしょう。

そんな訳で7時頃まで私と付属品の澤部君は校門の前で彼を待っていたのですが、そんな時彼が出てきました。

が、私をがっくりさせたのは彼が母親の手に引かれながら、泣いていたことです。
湯沢君は涙でヒックヒック言い、何故かびっこを轢きながら歩いてきました。

しかし流石に私と澤部君の姿に気付くと、バツの悪そうな顔をして、母親の車に無言で乗ってしまったのです。

はい、ここまでどうでした? 「そういうのって何処の学校でもあったよね。。。」
なんて思ってるんじゃないでしょうね?

湯沢君の凄いのはこれからです。さて、続きです。

翌明けて、湯沢君。流石に学校には来ませんでした。これも後から聞いた話ですが
学校側が他の生徒への影響を考えて湯沢君に1週間の停学を命じたそうです。

公立小学校でそんなことあんのか?と思いますが、実際来ませんでしたから、ありなんでしょう。

それでも1週間経てば校長が望もうと望むまいと彼は登校してきます。
学校に入る時、先生のボディーチェックを受けてましたから、並の大物ではありません。

まあ、それでも持ち込めるもんなんですね、カッターの1本や2本は。

「余裕だよ」と言って、私の目の前でカッターをカチカチやっていた湯沢君の目は不敵にも輝いていました。

と、言ってもまた刃傷沙汰を起こしたわけではありません。
そんな芸の無い湯沢君ではありません。

先ほどの斬り付け事件からすれば大したインパクトではありませんが。。。。

その週の学級ルームなるオリエーティーリングで、確か水曜日の5時間目だったと思いますが、
止めときゃ良いのに「何故湯沢君があんなことをしたのか?」というテーマでクラスで話合ったんですね。

教員のレベルが上がっているのか、下がっているのかは知りませんが、今だったら間違いなくそんな危険なことはしないと思います。

その場である女子が、しれっとしている湯沢君に激昂して「湯沢君はそんなに喧嘩したいなら岩とでも喧嘩すればいいと思いまーす!!」とほざいたわけですね。

「別に喧嘩じゃねーじゃん。一方的に斬り付けただじゃん。」と心の中で、思う私。

すると湯沢君はスッと立って教室を出て行ってしまいました。
もうこうなると先生でも止められないんですね。だって、恐いでしょう。先生だって

湯沢君が発見されたのは1時間後、校舎から300mほど離れた団地に付随した公園のベンチです。
両手の指が7本折れてました。

岩と喧嘩したんです。もう得体が知れない化物ですね。ここまでくると。。。。

次号へ続く